東側外観.  周辺は古い集落がひろがるなか、ぱっと目を引く外壁のベージュ。 建物四隅と屋根の四カ所スリットをもつ。正方形平面でキュービックな上にとんがり屋根をのせる。
北西外観.  建物四隅にスリットを、屋根にも東西南北にスリットをもつ。そこから入る光に、ひらかれたワンルーム
ダイニング・テーブルからエントランスを見る

2Fホール

屋根てっぺんのトップライトと

その下側の東西南北にあるスリットから光がはいる

2F個室は天井を一部透明にしてその光を導く

 

スリットの家

敷地は古い集落にあり、母屋の裏の畑の一部を利用して
ご夫婦とまだ小さいこども二人のための住まいを依頼された。
富山ではよくある母屋からの若世帯の増築である。
知人である施主からの要望は「楽しい家」。
それと限られた建築予算だった。

考えたことは、要素を少なくしてシンプルにすること。
できるだけ間仕切りや建具をなくしてワンルームとし
今必要な部屋を確保し、空間ヴォリュームは大きめにとり個室の追加に備えること。
周辺からの視線を気にされていたこともあり、開口部もできるだけ少なくした。
そんな比較的閉じた、単純なワンルームの家をイメージしてデザインをすすめた

光が限定されたスリットからはいる、シンプルなハコ
ハコの四隅がとられ スリットとなり そこから光がはいる
本来、入隅は暗くなりがちだが、細くともそこから光が入ることは気持ちがよい
建物四隅に同じように配置した スリットからの光が、陽の動きとともに変化し
内部のそこかしこに浸透することを意図した

2階は建物外側に個室群が配置され中央は吹抜け
屋根のてっぺんと、東西南北に切りこまれたスリットから入る光に
寝室などの個室は、天井を透明にして、その光をとりこみ、
また吹抜けをかいして気配を感じるとることができる。
個室の大きさは最小にして吹抜け周辺は梁だけはかけて、後の増築に備えた

この住まいの中央には「やぐら」がある。
やぐらは基礎から立ち上がり屋根までのびる。
ダイニング・テーブルを中心におき、家族みなが集まる楽しい場とし
そこに4本の柱が斜めにたちあがって「やぐら」をつくる。
やぐらの高さは7m。気積は大きい。ワンルームである大きな気積の内部空間を統合する。
常にこの住まいの中心にあり、家族のよりどころとなることを期待した。
8m×8m正方形のなかに、居間を交点として、
キッチン、テラス、サロン、水回りをクロス状に配置し
結果、放射状ににいろいろな場所ができ、「やぐら」を中心につながった。

ダイニング・テーブルを1Fの中心におき 生活の中心とした

2Fの主寝室  

スリット状のトップライトから光がはいる

生活の中心、ダイニングをかこう 4本の柱がつくる「やぐら」。  そこを真ん中にキッチン、エントランス、居間、水回りをクロス状に配置,

建物中心に4本の柱がたち

「やぐら」となり屋根を支える

それがあることで, 構造的に安定する

建築的中心と構造的中心が一致する

ちょうどこの地方特有のつくり

「わくのうち」のように

 

 

設計プロセス

シンプルなことがこの住宅の目指すこと
スリット(Slit)とは、切れ目、隙間のこと。  建物四隅に配置したスリットから入る光は、建物内部そこかしこに浸透する
東からの遠景。 敷地は周辺に田が広がる古い集落のなかにある。 若世帯の増築。左に見える母屋に連絡通路にてつながっている

階段室

カドがとられ スリットとなり 光がはいる

エントランスをかねる内部テラス

たこあつこの手洗器

猫の手の蛇口つき
潔いシンプルさをもとめて
ガラス作家 境田亜希のオリジナル照明
サロンからやぐらを見上げる